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所得税の計算のしくみ:累進課税と各種控除の順序

📌 情報の取り扱いについて:本記事は2026年時点の公開情報をもとに作成していますが、税制改正や制度変更により内容が古くなることがあります。NISA・iDeCo・ふるさと納税などの制度や金融商品の仕様は、利用前に必ず公式情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入や投資判断を推奨するものではありません。記載に誤りを見つけられた場合はお問い合わせフォームよりご連絡いただけると助かります。

源泉徴収票や確定申告書を見ても、所得税の計算が分かりにくいと感じる人は少なくありません。日本の所得税は累進課税で、収入から複数の控除を順番に差し引いた金額に税率を掛け、さらに税額控除を引いて最終的な税額が決まります。順序を理解すると、年収の変化や控除の見直しが税額にどう影響するかが見えてきます。

全体の流れ

所得税の計算は大きく次の順序で進みます。

  1. 収入から必要経費(給与所得控除など)を差し引いて「所得」を算出
  2. 所得から所得控除を差し引いて「課税所得」を算出
  3. 課税所得に税率を掛けて「算出税額」を算出
  4. 算出税額から税額控除を差し引いて「年税額」を算出
  5. 年税額に復興特別所得税(2.1%)を加算

「収入」と「所得」と「課税所得」は別物で、それぞれの段階で何を引くかが決まっています。

段階1:収入から所得を出す

給与所得者の場合、給与収入から給与所得控除を差し引いた金額が給与所得です。給与所得控除は収入に応じて段階的に決まり、令和7年度税制改正により最低額が55万円から65万円に引き上げられました。上限は195万円のままです。

例えば年収500万円なら給与所得控除は144万円、給与所得は356万円となります。フリーランス・個人事業主の場合は、収入から必要経費を引いた金額が事業所得です。

複数の収入源がある場合は、それぞれを所得区分(事業・不動産・配当・一時など)ごとに計算し、合算します。

段階2:所得から課税所得を出す

所得から差し引けるのが所得控除で、15種類が定められています。

代表的なものとして、

  • 基礎控除:令和7年度税制改正により本則58万円に引き上げ。さらに年収665万円以下の納税者には特例で最大37万円が上乗せされ、最大95万円となります。
  • 配偶者控除・配偶者特別控除:最大38万円
  • 扶養控除:一般38万円、特定扶養親族(19-22歳)63万円
  • 社会保険料控除:支払額の全額
  • 生命保険料控除:最大12万円
  • 地震保険料控除:最大5万円
  • 医療費控除:年10万円超部分(または所得の5%超部分)
  • 小規模企業共済等掛金控除:iDeCo掛金の全額

これらを所得から差し引いた金額が課税所得です。所得控除は「税率を掛ける前」に引くため、税率の高い人ほど控除の効果が大きくなります。例えば税率20%の人にとって1万円の所得控除は2,000円分の所得税減になります。

段階3:税率を掛けて算出税額を出す

課税所得に超過累進税率を掛けます。最新の所得税率と速算控除額は次のとおりです。

課税所得 税率 速算控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超〜330万円以下 10% 97,500円
330万円超〜695万円以下 20% 427,500円
695万円超〜900万円以下 23% 636,000円
900万円超〜1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超〜4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

累進課税は「超えた部分にだけ高い税率がかかる」仕組みです。例えば課税所得400万円なら、195万円までは5%、195万〜330万円は10%、330万〜400万円は20%が適用されます。実際の計算では速算控除額を使うと簡便で、400万円×20%−42.75万円=37.25万円となります。

段階4:税額控除を引く

算出税額から直接差し引けるのが税額控除です。所得控除より控除の効果が直接的なのが特徴です。

代表的な税額控除として、

  • 住宅ローン控除:年末残高の0.7%(一定要件あり)
  • 配当控除:配当所得の10%(一定の場合5%)
  • 寄附金特別控除:寄附金額の40%(一定上限)
  • 外国税額控除:海外で課された税の調整

例えば住宅ローン控除20万円は、所得税から直接20万円が引かれます(所得税で引ききれない分は住民税からも一部控除)。

段階5:復興特別所得税

東日本大震災の復興財源として、年税額に2.1%を上乗せします。所得税額が10万円なら、復興特別所得税は2,100円です。この税は2037年まで継続予定です。

年末調整と確定申告

会社員の多くは年末調整により所得控除(扶養・保険料・住宅ローン2年目以降など)を勤務先経由で精算します。年末調整で対応できない医療費控除・寄附金控除・住宅ローン控除の初年度などは、確定申告で精算します。

副業・複数収入・株式譲渡益・不動産所得などがある場合も確定申告が必要なケースがあります。年末調整で控除を申告し忘れた場合は、確定申告(または還付申告、5年以内)で取り戻せます。

具体例:年収500万円・単身者の場合

年収500万円の単身者・所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみと仮定すると、

  • 給与収入:500万円
  • 給与所得控除:144万円
  • 給与所得:356万円
  • 社会保険料控除:約75万円
  • 基礎控除:58万円(本則)
  • 課税所得:223万円
  • 算出税額:223万円×10%-9.75万円=12.55万円
  • 復興特別所得税込み:約12.81万円

※令和7・8年分は所得階層別の時限上乗せがあり、この例(合計所得356万円)では基礎控除68万円→税額は約11.79万円とさらに下がります。令和9年分以降は本則58万円です。

ここに生命保険料控除(最大4万円程度)やiDeCo掛金などを加えると、課税所得がさらに下がります。所得税率10%帯にいる人にとって、1万円の所得控除は約1,000円の所得税減+約1,000円の住民税減で、合計約2,000円の効果です。

住民税との関係

住民税の計算も所得税と似た構造ですが、控除額が一部異なります(基礎控除43万円など)。税率は所得割10%でフラット、これに均等割(年5,000円程度)が加わります。住民税は前年所得に対する後払いで、6月から翌5月の12回で天引きされます。

制度変更の可能性

所得税の各種控除額・税率区分は法改正で随時見直されます。令和7年度税制改正では、基礎控除の引き上げ・給与所得控除最低額の引き上げにより、従来「103万円の壁」と呼ばれていた課税最低限が「160万円の壁」に拡張されました(給与収入160万円までは所得税が発生しないライン)。直近の制度内容は国税庁公式サイトで確認してください。

計算の流れを理解すると、控除の効果を同じ枠組みで考えられるようになります。

所得税・住民税・社会保険料の3つを家計全体で俯瞰する整理は 家計と税制の総合復習 を参照してください。

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