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退職金の受取方と運用 — 一時金・年金・運用の選択肢

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📌 情報の取り扱いについて 本記事は2026年5月時点の公開情報をもとに作成しています。退職所得控除、公的年金等控除、iDeCo、NISA、税制、社会保険制度、退職金制度などは変更されることがあります。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品・金融機関・受け取り方法・投資手法の利用や投資判断を推奨するものではありません。

退職金は「受け取り方」と「使い方」が重要

会社員にとって、退職金は人生で最大級のお金が入ってくるタイミングです。勤続年数や会社の制度によっては、1,500万円〜3,000万円規模になることもあります。

この退職金をどう受け取り、どう管理するかで、老後の生活水準は大きく変わります。退職金は、単に「もらって終わり」のお金ではありません。

  • 一時金でまとめて受け取るのか
  • 年金形式で分けて受け取るのか
  • 一部を一時金、一部を年金にするのか
  • 受け取った後にどれくらい運用するのか
  • どれくらい現金として残すのか

これらを考えておくことが大切です。この記事では、退職金の受け取り方と、受け取った後の運用について整理します。

退職金の受け取り方は3パターン

会社の退職金制度によって選べる方法は異なりますが、一般的には次の3パターンがあります。

受け取り方 内容
一時金 退職時にまとめて受け取る
年金形式 分割して年金のように受け取る
一時金+年金の併用 一部を一時金、残りを年金形式で受け取る

どれが有利かは、次の要素で変わります。

  • 退職所得控除
  • 公的年金等控除
  • 会社の退職金制度
  • 企業年金の利率や受取期間
  • 公的年金の受給額
  • iDeCoの受取時期
  • 退職後の収入
  • 自分で運用するかどうか

税金だけを見れば一時金が有利になりやすいケースがあります。一方で、毎年安定した収入が欲しい人や、自分で大きなお金を管理するのが不安な人は、年金形式や併用も選択肢になります。

一時金で受け取る場合:退職所得控除を使える

退職金を一時金で受け取る場合、税制上は 退職所得 として扱われます。退職所得には、退職所得控除という大きな控除があります。退職所得控除額は、勤続年数に応じて次のように計算します。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円 × 勤続年数
20年超 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

勤続年数が20年以下で、計算した控除額が80万円未満になる場合は、80万円が最低額になります。なお、勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げて計算します。

たとえば、勤続38年の場合は次のようになります。

800万円 + 70万円 × 18年 = 2,060万円

この場合、退職金が2,060万円以下であれば、退職所得控除の範囲内に収まります。つまり、退職所得の金額は基本的に0円になり、退職所得に対する所得税・住民税はかかりません。

退職金が退職所得控除額を超える場合でも、一般的な退職金では、次の式で退職所得を計算します。

退職所得の金額 =(退職金の収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2

たとえば、退職金が2,500万円、退職所得控除額が2,060万円の場合は、次のようになります。

(2,500万円 − 2,060万円)× 1/2 = 220万円

この220万円が退職所得として課税対象になります。

ただし、短期退職手当等や特定役員退職手当等では、計算方法が一般的な退職金と異なる場合があります。

年金形式で受け取る場合:公的年金等控除の対象

退職金を年金形式で受け取る場合、毎年受け取る金額は、原則として 公的年金等に係る雑所得 として扱われます。この場合、公的年金等控除の対象になります。

公的年金等控除額は、次の要素によって変わります。

  • 65歳未満か65歳以上か
  • 公的年金等の収入金額
  • 公的年金等以外の所得金額

公的年金等以外の所得が1,000万円以下の場合、控除額の最低額は、65歳未満で60万円、65歳以上で110万円が目安になります。ただし、これはあくまで一定条件のもとでの最低額です。公的年金、企業年金、退職年金などを合わせた年金収入が増えると、課税対象となる雑所得が発生することがあります。

年金形式で受け取るメリットは、まとまったお金を自分で一括管理しなくてよいことです。毎年一定額を受け取れるため、生活費の見通しが立てやすくなる場合があります。

一方で、一時金で受け取る場合に比べて税負担が大きくなるケースもあります。また、年金形式で受け取る退職金は、公的年金や他の企業年金と合算して考える必要があります。所得税・住民税だけでなく、国民健康保険料や介護保険料などに影響する場合もあるため、総合的に判断しましょう。

一時金と年金形式、どちらが有利か

退職金の受け取り方は、税金だけで決めるものではありません。ただし、退職所得控除の範囲内に収まる場合は、税制上は一時金が有利になりやすいです。一時金が有利になりやすい理由は、次の通りです。

  • 退職所得控除を使える
  • 控除後の金額の2分の1が課税対象になる
  • 退職所得は他の所得と分けて計算される
  • 受け取った後に自分で使い道を決められる
  • 新NISA、預金、個人向け国債などに分けて管理できる

一方で、次のような場合は年金形式や併用も検討する価値があります。

  • 退職金が退職所得控除を大きく超える
  • 一括で大きなお金を管理するのが不安
  • 毎年の安定収入を重視したい
  • 会社の企業年金制度の利率や条件が良い
  • 公的年金が少なく、毎年の収入を補いたい
  • iDeCoの一時金受取と会社退職金の時期が重なる

重要なのは、会社の退職金だけでなく、iDeCo、企業型DC、企業年金、公的年金も含めて考えることです。退職金の受け取り方は、会社の制度によって選択肢が限られる場合があります。制度や商品は変わるので、最新情報は公式サイトで確認してください。

iDeCoと退職金の受取時期に注意

iDeCoを一時金で受け取る場合、会社の退職金との関係に注意が必要です。

iDeCoの老齢一時金も、税制上は退職所得として扱われます。そのため、会社の退職金とiDeCo一時金を近い時期に受け取ると、退職所得控除の計算で調整が入る場合があります。

特に注意したいのが、iDeCoなどの老齢一時金を先に受け取り、その後に会社の退職金を受け取るケースです。

令和7年度税制改正により、2026年1月1日以後にiDeCoなどの老齢一時金を受け取っている場合、その後に受け取る退職手当等について、退職手当等を受ける年の前年以前9年内に老齢一時金を受けていると、退職所得控除額の計算で重複期間の調整対象になります。実務上は、従来の「5年ルール」から「10年ルール」へ厳しくなった、と説明されることがあります。

一方で、会社の退職金を先に受け取り、その後にiDeCoを一時金で受け取る場合は、従来からの19年ルールに注意が必要です。

つまり、受け取り順によって注意点が変わります。

  • iDeCo一時金を先に受け取る → その後の会社退職金との10年ルールに注意
  • 会社退職金を先に受け取る → その後のiDeCo一時金との19年ルールに注意

退職金とiDeCoを両方受け取る人は、受取時期によって税額が大きく変わる可能性があります。受取時期を決める前に、必ず個別にシミュレーションしましょう。詳しくは、関連記事「iDeCoの基礎と出口戦略」も参考にしてください。

退職金を受け取った後の運用パターン

退職金を一時金で受け取った場合、その後の管理方法にはいくつかの選択肢があります。大きく分けると、次の3つです。

1. 全額を預貯金で保有する

最も安全性を重視する方法です。普通預金、定期預金、個人向け国債などで保有します。

メリットは、元本の安定性が高く、必要なときに使いやすいことです。

一方で、インフレが進むと、実質的な購買力が下がる可能性があります。また、長期で見れば、株式や投資信託で運用した場合に比べて、資産成長の機会を逃すことがあります。

2. 一括で投資する

生活費や近い将来使うお金を除いたうえで、まとまった金額を新NISAや課税口座で投資する方法です。

メリットは、早い段階で資金を市場に置けるため、運用期間を長く取りやすいことです。

一方で、投資直後に大きな下落が来ると、精神的な負担が大きくなります。特に退職後は、現役時代のように収入でリカバリーしにくい場合があります。退職金を一度に大きく投資する場合は、自分がどれくらいの下落に耐えられるかを考えておく必要があります。

3. 分割して投資する

退職金を、数か月から数年かけて少しずつ投資する方法です。

たとえば、3年〜5年程度かけて、毎月または四半期ごとに新NISAや課税口座へ投資していくイメージです。

メリットは、高値づかみの不安を減らしやすいことです。投資直後の暴落による心理的ダメージを抑えやすくなります。

一方で、相場が上昇し続けた場合は、一括投資よりリターンが低くなる可能性があります。

退職金は老後生活を支える大切な資金です。60代以降では、理論上の期待リターンだけでなく、心理的に続けられるか、生活費に影響しないかも重要です。そのため、退職金の運用では、分割投資を選ぶ方が現実的な人も多いです。

新NISAで退職金を活用する

退職金の一部を新NISAで運用する場合、年間投資枠を意識する必要があります。2024年以降の新NISAでは、年間投資枠は次の通りです。

年間投資枠
つみたて投資枠 120万円
成長投資枠 240万円
合計 360万円

たとえば、退職金のうち1,000万円を新NISAで運用したい場合、年間360万円の枠をすべて使えれば、3年程度でNISA口座に移していくことができます。

ただし、年間360万円を使うには、つみたて投資枠と成長投資枠の両方を使う必要があります。また、新NISAの生涯非課税保有限度額は1,800万円で、そのうち成長投資枠は1,200万円までです。

退職金をすべて一度に新NISAへ入れることはできません。NISA枠に入りきらない分は、課税口座で運用するか、預金や個人向け国債などで保有するかを考える必要があります。

新NISAは非課税メリットが大きい制度ですが、流動性やリスク許容度も大切です。退職金のすべてを投資に回すのではなく、生活費、医療費、介護費、住宅修繕費などを別に確保したうえで、余裕資金を使うのが基本です。

60代以降のリスク許容度

退職金を運用するときは、現役時代よりリスク許容度を低めに考えるのが基本です。理由は、運用期間が短くなり、収入でリカバリーしにくくなるからです。

たとえば、30代なら30年以上の運用期間を見込めるため、株式比率を高めにしても、暴落から回復する時間を取りやすいです。一方、60代以降は、10年〜30年程度の運用期間を想定することになります。

近いうちに使うお金は、株式ではなく、預金や個人向け国債など元本の安定性を重視した資産に置く方が安心です。一方で、60代でも人生はまだ長く、すべてを現金にするとインフレに負ける可能性があります。そのため、退職金を次のように分けて考えると分かりやすいです。

資金の目的 置き場所の例
1〜3年以内に使うお金 普通預金、定期預金など
3〜10年で使う可能性があるお金 個人向け国債、定期預金、低リスク資産など
10年以上使わない余裕資金 新NISA、投資信託など

退職金の運用では、「何%を株式にするか」だけでなく、「いつ使うお金か」を分けることが大切です。

株式比率の目安としては、40%〜60%程度が検討されることもあります。ただし、これはあくまで一例です。公的年金、退職金額、住宅ローン、家族構成、医療・介護費、リスク許容度によって適切な比率は変わります。

退職金で気をつけたいこと

退職金を受け取った後は、気をつけたいポイントがあります。

1. 高額金融商品の勧誘に注意する

退職金が口座に入った直後は、金融機関からさまざまな商品の案内を受けることがあります。たとえば、外貨建て保険、仕組み債、退職金専用プラン、通貨選択型ファンドなどです。

これらの商品がすべて悪いわけではありません。ただし、仕組みが複雑だったり、手数料が高かったり、途中解約で大きな損失が出たりする商品もあります。「退職金限定」「期間限定」「高利回り」といった言葉だけで判断しないようにしましょう。

まずは、低コストのインデックスファンド、個人向け国債、預金、新NISAなど、仕組みが分かりやすい選択肢から検討するのが安全です。

2. すぐに投資判断しない

退職金として1,500万円〜3,000万円規模のお金が入ると、気持ちが大きく動きます。

「早く運用しないともったいない」「増やさなければいけない」「少し使っても大丈夫ではないか」

このように感じることもあります。しかし、退職直後は生活リズムも収入構造も変わる時期です。少なくとも3〜6か月程度は、無理に大きな投資判断をしない期間を置くのも一つの方法です。

まずは、生活費、年金見込額、医療費、住宅費、家族への支援、相続や贈与の希望などを整理しましょう。

3. 公的年金との組み合わせを考える

退職金は、それ単体で考えるより、公的年金と組み合わせて考える方が現実的です。

まずは、ねんきん定期便やねんきんネットで、自分の年金見込額を確認しましょう。そのうえで、毎月の生活費との差額を、退職金や運用資産でどのように補うかを考えます。

退職金を「老後資金30年分」として少しずつ取り崩すのか。それとも「年金の不足分を補う資金」として管理するのか。この考え方によって、運用方針は変わります。

まとめ

退職金の受け取り方には、一時金、年金形式、一時金と年金の併用があります。

一時金で受け取る場合は、退職所得控除を使えるため、税制上有利になりやすいケースがあります。一方で、年金形式には、毎年安定した収入を得やすいというメリットがあります。どちらが有利かは、退職所得控除、公的年金等控除、会社の制度、iDeCoの受取時期、公的年金額、退職後の収入によって変わります。

受け取った後の運用は、全額預貯金、一括投資、分割投資の3つが基本です。退職金は老後生活を支える重要な資産なので、焦って一括投資する必要はありません。退職後の生活費、医療費、介護費、住宅費を確認し、すぐ使うお金と長期で運用するお金を分けましょう。

新NISAは、退職金の運用先として有力な選択肢ですが、年間投資枠には上限があります。

また、退職金とiDeCo一時金の受取時期が近い場合、退職所得控除の調整が入る可能性があります。

退職金が入った直後は、高額商品の勧誘にも注意が必要です。まずは3〜6か月程度、家計と年金見込額を整理し、落ち着いてから運用方針を決めるとよいでしょう。

※ 退職所得控除、公的年金等控除、iDeCoの受取ルール、NISA制度、税制は変更される可能性があります。退職金の最適な受け取り方は、勤続年数、退職金額、年金額、他の収入、家族構成、住宅ローン、医療・介護費などによって異なります。必要に応じて、勤務先の人事・退職金担当部署などへ確認してください。制度や商品は変わることがあるので、最新情報は公式サイトでご確認ください。

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