投資信託の選び方 — 信託報酬・純資産・総経費率の見方
投資信託は何を見て選べばよいか
NISAで投資信託を選ぶとき、何を基準に選べばよいか分からない人も多いと思います。初心者が長期インデックス投資を前提に選ぶなら、まず見るべき項目は次の4つです。
- 信託報酬
- 純資産総額
- 総経費率・実質的なコスト
- トラッキングエラー
投資信託には、全世界株式、米国株式、先進国株式、新興国株式、債券、バランス型、REIT、テーマ型など、さまざまな種類があります。最初からすべてを比較しようとすると大変です。まずは、低コストでシンプルなインデックスファンドを中心に、基本項目を確認しましょう。
1. 信託報酬(運用管理費用)
信託報酬とは、投資信託を保有している間、信託財産から日々差し引かれる運用管理費用のことです。通常は年率で表示されます。
たとえば、信託報酬が年0.1%のファンドを100万円保有している場合、単純計算では年間1,000円程度のコストがかかるイメージです。一見小さく見えますが、20年、30年と長期保有すると、コストの差は無視できません。
同じ指数に連動するインデックスファンドでも、信託報酬には差があります。たとえば、全世界株式やS&P500に連動するファンドでも、年0.05%台のものもあれば、年0.2%を超えるものもあります。長期インデックス投資では、信託報酬はできるだけ低いものを選ぶのが基本です。
ただし、信託報酬が最安なら必ずよい、というわけではありません。純資産総額、運用の安定性、総経費率、運用会社の実績も合わせて見る必要があります。
2. 純資産総額
純資産総額とは、そのファンドにどれくらいのお金が集まっているかを示す数字です。投資信託の規模を表す数字と考えると把握しやすくなります。
純資産総額が大きいファンドには、次のようなメリットがあります。
- 運用が安定しやすい
- 繰上償還のリスクが相対的に低くなりやすい
- 売買や資金流入出に対応しやすい
- 運用コストの効率がよくなりやすい
繰上償還とは、投資信託が予定より早く運用を終了してしまうことです。長期で積み立てるつもりだったファンドが途中で償還されると、別のファンドに乗り換える必要が出てきます。
長期インデックス投資では、純資産総額がある程度大きく、かつ増加傾向にあるファンドを選ぶと安心です。目安としては、最低でも100億円以上、できれば1,000億円以上あると、長期保有の候補として見やすくなります。
ただし、これはあくまで目安です。新しく設定されたファンドでも、大手運用会社が低コストで主要指数に連動する商品を出した場合、短期間で純資産総額を伸ばすことがあります。逆に、純資産総額が大きくても、資金流出が続いているファンドは注意が必要です。単純に「純資産が小さいからダメ」「大きいから必ず安心」と決めつけず、運用方針、運用会社、残高の推移、繰上償還の条件も合わせて確認しましょう。
3. 総経費率・実質的なコスト
投資信託のコストを見るときは、信託報酬だけでなく、総経費率や運用報告書の費用明細も確認できるとより安心です。
信託報酬は、あらかじめ決められている運用管理費用です。一方、総経費率は、運用報告書に記載される費用情報をもとに、一定期間にかかった運用管理費用やその他費用を示すものです。最近は、交付目論見書にも、直近の運用報告書に基づく総経費率が参考情報として記載されるケースが増えています。そのため、投資信託を買う前でも、目論見書で総経費率を確認しやすくなっています。
ただし、総経費率にすべての費用が含まれるわけではありません。総経費率には、原則として、購入時手数料、売買委託手数料、有価証券取引税などは含まれません。より細かく確認したい場合は、運用報告書の「1万口当たりの費用明細」も確認しましょう。
同じ指数に連動するファンドでも、実際にかかるコストには差が出ることがあります。たとえば、新興国株式、海外REIT、小型株、複数ファンドに投資するファンド・オブ・ファンズなどは、保管費用や取引コストが高くなりやすい場合があります。信託報酬が低く見えても、その他費用が大きいと、実質的なコストは思ったより高くなることがあります。
ただし、初心者が最初から細かい費用明細まで完璧に比較する必要はありません。まずは、信託報酬が低く、純資産総額が大きく、運用実績のある大手のインデックスファンドを候補にしましょう。同じ指数に連動するファンド同士で迷ったときに、総経費率や運用報告書を確認するとよいでしょう。
4. トラッキングエラー
トラッキングエラーとは、ファンドの値動きが、連動を目指している指数からどれくらいズレているかを示す指標です。
インデックスファンドは、特定の指数に連動する運用成果を目指します。たとえば、S&P500連動ファンドなら、S&P500の値動きにできるだけ近い成績を目指します。しかし、実際のファンドの成績は、指数と完全に一致するわけではありません。主な理由は次の通りです。
- 信託報酬などのコストがかかる
- 売買タイミングのズレがある
- 配当金や分配金の扱いが指数と異なる
- 為替や税金の影響がある
- ファンドの運用方法が完全複製ではない場合がある
トラッキングエラーが小さいほど、指数の動きに近い運用ができていると考えられます。
ただし、初心者がすべてのファンドについてトラッキングエラーを細かく比較する必要はありません。主要な低コストインデックスファンドであれば、極端に大きなズレが出ることは多くありません。同じ指数に連動する複数のファンドで迷ったときに、運用報告書や月次レポートで、指数との乖離が大きすぎないかを見る程度で十分です。
長期保有に向くファンドの特徴
長期保有に向く投資信託には、次のような特徴があります。
- 連動する指数がシンプルである
- 信託報酬が低い
- 純資産総額が大きい
- 純資産総額が増加傾向にある
- 総経費率や実質的なコストが高すぎない
- トラッキングエラーが大きすぎない
- 運用会社が信頼できる
- 仕組みがシンプルで把握しやすい
- 分配金を頻繁に出すタイプではない
代表的な候補としては、全世界株式、S&P500のような、広く分散された低コストのインデックスファンドがあります。NISAやiDeCoで長期運用する場合、複雑な商品よりも、低コストでシンプルなインデックスファンドの方が続けやすいことが多いです。
避けた方がよいファンドの特徴
初心者が長期インデックス投資をする場合、次のようなファンドは慎重に考えた方がよいです。
- 信託報酬が高い
- 純資産総額が小さく、減少傾向にある
- 連動指数や運用方針が分かりにくい
- 毎月分配型など、頻繁に分配金を出す
- テーマ型で、特定の業種や流行に大きく依存している
- 通貨選択型など、仕組みが複雑
- レバレッジ型・ブルベア型など値動きが大きい
- 過去の高リターンだけを強調している
特に、毎月分配型の投資信託は注意が必要です。分配金が出ると得をしているように見えますが、分配金はファンドの資産から支払われます。分配の原資になるのは、ファンドが得た値上がり益と、保有する株式・債券から受け取る配当・利息収入です。ところが毎月分配型は、その月の運用成果に関係なく毎月決まった額を支払う設計のものが多く、相場が上がらない月は値上がり益が乏しいため、配当・利息だけでは予定した分配額に届きません。その不足分は、預けた元本を取り崩して払い戻されます(元本払戻金)。つまり、受け取った分配金の一部が、実は自分が出した元本の払い戻しだった、ということが起こり、これでは資産はなかなか増えません。また、分配金を受け取ると、再投資されず、複利効果が弱まりやすくなります。
長期で資産形成を目指すなら、分配金を頻繁に受け取るタイプより、分配を抑えてファンド内で再投資されるタイプの方が有利です。
NISAで使える主な選択肢
NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠があります(年間投資枠・非課税保有限度額・成長投資枠の対象外商品など制度の詳細はNISAの基本を参照)。
つみたて投資枠
つみたて投資枠では、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託が対象になります。対象商品は金融庁の基準を満たしたものに限られます。そのため、つみたて投資枠で買える商品は、ある程度、長期積立に向いたものに絞られています。
まずはつみたて投資枠で低コストの全世界株式やS&P500などを選ぶのがおすすめです。
成長投資枠
成長投資枠では、つみたて投資枠の対象商品に加え、より幅広い投資信託、ETF、上場株式などを選べます。ただし、整理銘柄・監理銘柄や信託期間の短い投資信託など対象外の商品もあります。
成長投資枠を使う場合でも、つみたて投資枠と同じように、低コストのインデックスファンドで十分です。
銘柄を増やしすぎない
投資信託を選び始めると、「あれもこれも気になる」と、銘柄を増やしたくなることがあります。しかし、長期インデックス投資では、銘柄を増やしすぎないことも大切です。理由は次の通りです。
1. 投資対象が重複しやすい
オルカンにS&P500を加えると、米国株の比率が高くなります。オルカンの中にも米国株が多く含まれているためです。両方を持つこと自体が悪いわけではありませんが、「なんとなく分散しているつもり」で持つと、実際には米国株の比重が高まっている場合があります(両方持つ意味の詳しい考え方はインデックス投資の基本(オルカン vs S&P500)を参照)。
2. 高コスト商品が混ざりやすい
信託報酬は、保有額に対する率でかかります。そのため、2本に分けたからといってコスト率が単純に2倍になるわけではありません。ただし、銘柄数が増えるほど、高コスト商品や仕組みの複雑な商品が混ざるリスクは高くなります。長期投資では、平均コストを上げすぎないことが重要です。
3. 管理が煩雑になる
銘柄数が増えると、管理が難しくなります。どのファンドをいくら買うか、どの比率で持つか、どのタイミングで見直すかを考える必要が出てきます。管理が面倒になると、積立を続けるモチベーションが下がることがあります。
4. 分散しすぎても成果が大きく変わらない場合がある
分散は大切ですが、似たような投資対象をいくつも持っても、リスク低減効果が大きく増えるとは限りません。全世界株式ファンドのように、もともと広く分散されたファンドを持っている場合、さらに似た商品を追加しても、実質的な中身はあまり変わらないことがあります。
まずはオルカン1本、またはS&P500を1本など、シンプルな構成から始める方が整理しやすくなります。
まとめ
投資信託を選ぶときの主な確認ポイントは、信託報酬、純資産総額、総経費率・実質的なコスト、トラッキングエラーです。長期インデックス投資では、低コストで、純資産総額が大きく、連動指数がシンプルなファンドを選ぶことが基本です。
全世界株式やS&P500のような低コストで広く分散されたインデックスファンドを1本から始めるのがおすすめです。
商品名や流行に惑わされず、シンプルに「低コスト・大規模・シンプルな指数連動」のファンドを選びましょう。
よくある質問
- Q1. 投資信託を選ぶときに見るべき指標は?
- 初心者が長期インデックス投資を前提に選ぶなら、信託報酬・純資産総額・総経費率(実質的なコスト)・トラッキングエラーの4つを確認するのが基本です。同じ指数に連動するファンドでも、信託報酬は年0.05%台から0.2%超までと差があります。長期インデックス投資では、信託報酬はできるだけ低いものを選ぶのが基本です。
- Q2. 純資産総額はどれくらいあれば安心?
- 目安としては、最低でも100億円以上、できれば1,000億円以上あると、長期保有の候補として見やすくなります。ただしこれはあくまで目安で、新しく設定されたファンドでも、大手運用会社が低コストで主要指数に連動する商品を出した場合、短期間で純資産総額を伸ばすことがあります。逆に、純資産総額が大きくても資金流出が続いているファンドは注意が必要です。
- Q3. 信託報酬と総経費率の違いは?
- 信託報酬はあらかじめ決められている運用管理費用で、年率で表示されます。一方、総経費率は運用報告書に記載される費用情報をもとに、一定期間にかかった運用管理費用やその他費用を示すものです。総経費率には原則として購入時手数料、売買委託手数料、有価証券取引税などは含まれません。より細かく確認したい場合は、運用報告書の「1万口当たりの費用明細」も確認しましょう。
- Q4. 毎月分配型の投資信託を避けた方がよい理由は?
- 毎月分配型は、分配金が出ると得をしているように見えますが、分配金はファンドの資産から支払われます。毎月決まった額を払う設計のものが多く、相場が上がらず運用成果が足りない月は、不足分が預けた元本を取り崩して払い戻されます(元本払戻金)。受け取った分配金の一部が、実は自分の元本の払い戻しだった、ということが起こります。また、分配金を受け取ると、再投資されず、複利効果が弱まりやすくなります。長期で資産形成を目指すなら、分配を抑えてファンド内で再投資されるタイプの方が有利です。
- Q5. NISAのつみたて投資枠と成長投資枠、何が違う?
- つみたて投資枠(年間120万円)では、金融庁の基準を満たした長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託が対象になります。成長投資枠(年間240万円)では、つみたて投資枠の対象商品に加え、より幅広い投資信託、ETF、上場株式などを選べます。ただし、整理銘柄・監理銘柄、信託期間20年未満、毎月分配型、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託などは成長投資枠でも対象外です。
- Q6. オルカンとS&P500は両方持つべき?
- オルカンにS&P500を加えると、米国株の比率が高くなります。オルカンの中にも米国株が多く含まれているためです。両方を持つこと自体が悪いわけではありませんが、「なんとなく分散しているつもり」で持つと、実際には米国株の比重が高まっている場合があります。まずはオルカン1本、またはS&P500を1本など、シンプルな構成から始める方が整理しやすくなります。米国比率を高めたいなど明確な理由がある場合に、オルカンとS&P500を組み合わせる、と考えると整理しやすくなります。
- Q7. テーマ型ファンドは避けた方がよい?
- テーマ型は特定の業種や流行に大きく依存しており、基本的に必要ないです。信託報酬が高い、純資産総額が小さく減少傾向にある、過去の高リターンだけを強調している、通貨選択型など仕組みが複雑、レバレッジ型・ブルベア型など値動きが大きい、といった特徴を持つファンドも同様に注意が必要です。
※ 本記事は特定銘柄の購入を推奨するものではありません。投資判断は、信託報酬、純資産総額、交付目論見書、運用報告書などの公式情報をもとに、ご自身でご確認ください。投資信託は元本保証ではなく、値動きや為替変動により損失が生じる場合があります。
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